異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
今まで散々逃げてたくせに、バルドは何を思ったか、あたしの手からカップを奪うと一気に飲みほした。
「え、ホントに飲んだ……」
「だから、なんだ?」
バルドはガシッとあたしの腕を掴むと、そのまま歩き出す。どこに行くのかと思えば、めったに行かない自室。
警備に当たってる近衛兵に敬礼されたままドアを開いたバルドは、奥にある部屋にあたしを引っ張り込んだ。
深い青が印象的な絨毯に壁紙……天蓋は黒いベッドなんて初めて見たわ、なんて眺めてたら。なぜかそこにポンと座らされた。
「あ……あの?」
「寝る」
「はぁ……っ、て! い、いきなり脱がないでよ!!」
あまりに脈絡のないバルドの行動に、ぽかーんとしたけど。突然服を脱がれたら、目を逸らすに決まってるでしょうが!
「それに、ね……寝るって。ま、まさかね」
うんうん、大丈夫。バルドには好きな人がいるんだし。あたしに魅力があるなんて思えないし。
ここの警備に当たってた近衛兵になま暖かい目で見送られたのも、きっと気のせいだ。うむ!
「ね、眠るならあたし邪魔だよね? なら、もう帰……ぎゃっ!」
布団を捲ったバルドに、無理やり引っ張り込まれたんですけど!?
そのうえ彼に向かい合う形でギュッと抱きしめられれば、硬直するしかないってば。
め、目の前にバルドのたくましい胸だとか腕とか……鼻血が出そう。