異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……話を」
「え?」
よく聞こえなくて訊き返せば、聞こえるか聞こえないかの声で微かに呟いてきた。
「話を、してくれ。寝物語がわりに……おまえの世界のことを」
「あたしの……? べ、別に面白いことなんてなにもないけど」
目を瞬きながらバルドに言うと、「それでもいい」と返されたから。そこまでねだられたら仕方ないな……と話し始めた。
とは言うものの、ホントに何の変哲もない平凡な人生でしたから。思い出しても、なんてつまらないんだろうと落ち込む。
「……で、ね。あたしの髪を見た芹菜が『ちょ、こんなすごい綺麗な髪!初めて見たわ。どんな手入れしたらそんなのなれるのさ』って聞いてきたから、ただブラッシングしてるだけって教えたら。朝晩千回ずつやって、逆に枝毛だらけにしてたんだよね」
芹菜との出逢いのきっかけである髪の毛について話してたら、バルドの指がなぜかあたしの髪をすくうからドキッと胸が高鳴った。
「……そんなにいい髪を切ったのか?」
「あ、気にしないで。これはあたしが勝手に切ったんだし。売ったお金で旅費にもなったし」
「……そうか」
バルドは繰り返し指で髪の毛をすく。何のつもりかは知らないけど、バッサリやった2ヶ月前より多少は伸びた髪は、ボブくらいの長さになってる。