異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あ……あの……せ、芹菜はとっても綺麗な黒髪だよ。彼女はあたしがキレイっていってくれたけど、芹菜の方がサラサラだったし。芹菜はね、オシャレしないあたしにいろんな手ほどきしてくれたり。家に泊めてくれたり……遊びに連れていってくれたり。ホントに、優しくていい友達だった」
ドキドキに気づかれたくなくて一息に芹菜の話をしたら、いろんな思い出が浮かんできて泣きたくなってきた。
「……両親を亡くしたあたしに、姉妹になろうって本気で言ってくれたんだよ? それだけの覚悟で友達してくれるって、無くない?」
ぐすん、とつい鼻を鳴らしたら、ポンと頭に手が置かれた。恥ずかしくて俯いたままだったから、バルドがどんな顔をしていたかは知らない。
「……オレにも、無二の友がいた。幼いころからともに育ち、様々なことで競いあったものだ」
「バルドにも……友達いたんだね」
「先代が皇子という身分の、公爵家の長男だったからな。最も間近な友人で従兄弟だった」
意外、だった。
バルドが自分のことを話してくれるなんて。
楽しくなったあたしは、顔を上げてバルドのわずかに伸びたお髭さんに触れてみた。チクチクする。
「へえ、じゃあいろんな思い出があるんだね。今は公爵様なの?」