異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ああ……今は公爵として政務に関わっている」
バルドはいたずらするあたしの手を掴むと、ジッとこちらを見つめてきた。無言でだから、落ち着かない気分になる。
「あ……あの、そろそろ寝なくていいの? 朝も早いんでしょう」
「……」
バルドはあたしの顔をジッ見たまま、上半身に腕を絡ませて身体を密着させる。う……うわぁ、ちょっと近すぎですよ! 抱き枕って苦しいものなのね……としみじみ思ってると。
「……公爵になったやつの妻になったのが、アイカだ」
ぽつり、と。何の感慨も感じさせない声なのに、とんでもない言葉をバルドはあたしの耳に落とした。
「えっ……」
友人の妻になったのが、バルドの最愛のひとのアイカさん?
それって……それって。
何かを言うのを拒むように、バルドは固く固くあたしを抱きしめてくる。
きっと、触れちゃいけない。あたしが立ち入っていい領域じゃないんだ。
そう思いながらも、彼の気持ちを考えたらなんだか切なくて、自然と涙が流れた。
翌朝、朝6時というのに既にバルドの姿はなかったけど。
午後からバルドとミッツ村の視察に行く予定が組み込まれてて、驚いた。