異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「どうきんって……時代がかった言い回しで、意味わかんないんですけど」
《男女がひとつの寝具で寝ることじゃが、男女関係についても言うな》
「……は?」
それも知らないのかこの阿呆、とヒスイの目がしっかり語ってますよ。あたしをイライラさせるためにわざわざ現れたのか、この人は。
それにしても、たしかに昨夜はバルドの添い寝をしたけど。男女がどうこうなんて空気は微塵もなかったんですが。
「何を言ってんのか知らないけど、ヒスイが言うような男女関係なんて一切ないよ。第一、バルドにはちゃんと好きな人がいるんだし」
《それじゃ!》
ふわん、と浮いたヒスイはあたしをビシッ! と指さした。
《そもそも前提がおかしいのじゃ。バルドやらは、好いてるおなごがおるのじゃろ? なぜに、そなたにそのような痕を残す必要がある?》
「痕?」
《じゃから、確かめろと言うに。わしの知識ではたしかひとつの印じゃ》
何を言ってるんだ? とヒスイが指さした先をたどって……
浴室の壁面に取り付けられた鏡を見て、絶句した。
首筋にくっきりとついた紅い痕……うっ血の印に。
これって……
まさか。あの有名な。
「え……え……どえええっ!?」
あたしの奇妙な叫び声が廊下にまで響いたのは、言うまでもない。