異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



あたしの護衛としてロゼッタさんも一緒に玄関に向かった。お忍びなのに、正面から出ていいの? と思わないでもないけど。


「あ、和さん。おはよーございます」


侍女達の見送りを受けながら玄関から出れば、のんびりとした声でレヤーがこちらに翼をふる。彼の背中に特注品の鞍がつけられてる……ってことは。


「もしかして、レヤーに乗っていくの?」

「そうですよ。バルドさんが昨夜のうちに伝えてくださいましたから、ちゃんと休んでウォーミングアップも済ませてあります」


レヤーはそう言いながら、翼を膝に当て前屈みで屈伸運動をしてる。もはやツッコムのもよそうかな。


「……って言うか、バルドが昨夜?」

「はい。なんか侍従長っていう人が来てお話してかれましたよ。ミッツ村を訪れたいから、案内しろって。ついでに和さんも連れてくって」

「……」


準備運動でラジオ体操第一を始めたレヤーを見ながら、あたしは複雑な気持ちになってた。


あたしがバルドにミッツ村について話したのは、日付が変わったばかりの時だ。その時は否定されて、終わりだと思ってたのに。昨夜のうちにレヤーに行くと伝えてたって。


配慮してくれたんだ……と思うけど。あんなに超多忙なのに、どうやって時間を捻り出したんだろう?


それに、睡眠もろくに取ってない疲れた体で離れたミッツ村を訪れるなんて。無謀じゃないかとも思えた。


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