異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ガチャン、と金属の擦れあう音が聞こえる。馬の嘶きと重々しい足音に、バルドが来たのだと知った。
「来たか」
彼は、あの旅人だった時と同じ黒ずくめの旅装束で。やたら大きな剣を背負ってる。宮にいた時は多少整えられていた髪も、元のようにボサボサにしてあった。
整ってはいるけれどあんまり人相が良くないし、無数の傷がついてるからどこかの荒くれものか無法者に見える。泣く子も黙るレベルだわね。
はぁ、とため息を着いたあたしは腰に手を当ててバルドを見上げた。
「あのさ、村に行くのはいいけど。何で急に? それに、あなただってめっちゃ忙しいでしょ。あと、体調だって万全じゃないのに……どうして今日なのよ?」
「……真実を」
「は?」
「真実を知りたい、と言ったのはおまえだ」
バルドはあたしの言葉を全て受け流し、ただそれが理由で最大の目的とでも言いたげに話す。
「そ、そりゃあ……あたしは知りたくてバルドに着いてきたけど。なら、教えてくれるの? あたしがなぜ、この世界に来たのか。水無瀬の巫女であるのかを」
「……」
バルドはあたしを黙って見つめたまま、なかなか答えをくれない。いい加減に焦れてこちらから何かを言おうとしたタイミングで、制するように言葉を被せた。
「真実など、捉え方によって幾通りもの意味になる。おまえが望む答えを得られるかなど、知らぬ。だが、知ることは無駄ではあるまい」