異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
どうやらこの村の主産業はレヤーの情報通りに味噌作りみたいで、あちこちに大豆畑と大豆を炊く湯気が見えた。
ライムおばあちゃんの家はわりと奥の方にあって、村では少ない林が裏にある。家畜らしい鶏に似た鳥や牛が放し飼いされてて、のどかな雰囲気。
『こんにちは、ライムさん。昨日のレヤーです』
案内役をしたレヤーが数度石で木製のドアを叩くと、ギイッとすぐに開いた。
『お入り。待っていたよ』
年相応の嗄(しわが)れた声が奥から聞こえて、レヤーがヨイショ、と先に入っていった。
「ライムさんを連れて来ますので、奥にある居間の椅子にでも座っていてください」
勝手知ったるなんとやら、なのかレヤーはスタスタと廊下を進んでく。あたしはバルドの後ろで、いいのかな? と遠慮がちに中に入ろうとしたけど。
なんだか懐かしい感じがして、すぐに足を止めた。
玄関は靴を脱ぐ形式で、スリッパらしき履き物が人数分用意してある。バルドはどうするか見ていたら、彼は躊躇いなく靴を脱いでスリッパに履き替えた。
この異世界で初めて和式の玄関を見られるなんて……と自分の靴を脱ごうとしていると。
どむっ! と派手な音が隣から聞こえて、もしやと横を見れば……。
案の定ロゼッタさんが泥のついた靴のまま、玄関のたたきから家の中へ上がろうとしてた。
「ロゼッタさん、ストップ! すと~っぷ! 靴、靴脱いで。土足厳禁!」
「靴? なんで靴を脱がなきゃならないの?」
「せ、説明は難しいけど。とにかくこっちに履き替えて」
慌ててスリッパを渡して履き替えてもらったけど。たしかに、土足当然で育てば違和感あるものだよね。土足厳禁なんて。