異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
他は石造りの家が大半なのに、ライムおばあちゃんの家だけ木造なんて不思議。
基本的に日本家屋の造りに似てるかも。梁(はり)があったり太い柱で屋根を支えたり。
キョロキョロと落ち着きなく眺めていると、やがて居間とおぼしき部屋に着いた。そこは和室というより洋風で、ダイニングに近い。台所にテーブルと椅子が6つ。
レヤーが座っていてくれと言ってたけど。なんとなく腰を落ち着ける気にはなれなくて、立ったまま周りを眺める。
「あれ……?」
ふと、壁に掛かったものが気になったところで。レヤーの声が聞こえた。
「お待たせしました。ライムさんをお連れしましたよ」
慌ててそちらの方へ身体を向けると、すぐにおばあちゃんを見て急いで頭を下げた。
「は、はじめまして……和です。よろしくお願いします」
……って、あたし! 思いっきり日本語じゃん!!
いつもいつも周囲の人(ごく一部を除く)が日本語で話してくれるから、当然のように思ってたけど。本当なら日本語は喋れる人の方が少ないんだよね。
貴族や王族は教養として習得は義務みたいだけど、一般的に習う人は少ない。ましてやこんな地方で……と自分の迂闊さを呪ってると。
「はじめまして、あなたが和ね。秋人の言った通りに、かわいらしいお嬢さんだこと」
流暢な日本語が聞こえて顔を上げれば、そこにあったのはおばあちゃんの綺麗な微笑みだった。