異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「お母さんが……」
「ええ。それはきっと、和。あなたを守るためでもあったのだわ」
「えっ?」
あたしを……守るため?
「ど、どういうことですか? あたしを守るって……あたしは日本で結婚した両親から生まれたんじゃ」
胸に手を当てて身を乗り出すあたしに、ライムおばあちゃんはゆっくりと首を左右に振る。ひとくち紅茶を飲んだ彼女は、ふうっと息を吐いて揺れる紅茶の水面を見た。
「……ヒトミは、異界へ移る時、既に身籠っていたの。もしもあのままこの世界で生まれたら、あなたが利用される恐れもあった。大切なのは“血”だから、あなたでもヒトミでも帝国にとっては同じこと。
確実に命を落とすそんな残酷な命令に、従うわけにはいかない。だから、ヒトミは決死の覚悟で日本へたったひとりで渡ったの……そして、一人の少年に出逢った。それが、あなたが叔父と呼んでいる秋人だったの」