異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「秋人おじさんは……本当のおじさんじゃなかったんですか?」
誰とも言わずに溢れたあたしの呟きに、ライムおばあちゃんは肯定も否定もしない。ただ、紅茶のカップを持って揺れる水面を眺めてた。
「秋人は、ただあなたを案じていた。それだけは信じてあげて……たとえ真実(ほんとう)を知っても、全てはただあなたの幸せを願っていた。私が伝えられるのは、そこまで」
ふう……と息を吐いたライムおばあちゃんは、「冷めてしまったわね」と新しいお茶を淹れなおす。その様子から、これ以上秋人おじさんのことは訊けそうにないと悟るしかなかった。
だけど……
ソーサーに置いたティーカップの取っ手を握りしめ、あえてそれを踏み越えようとライムおばあちゃんを見る目に力を込めた。
「ひとつだけ、教えてください」
あたしの声が聞こえてるだろうに、ライムおばあちゃんは茶葉を小さな匙で缶から掬う。そして、暖めたティーポットにお湯を入れて茶葉が開くのを待つ。
ただ、待っている彼女にもう一度声をかけた。
「秋人さん……は、無事なんですか? それから……あなたはお母さんの知り合いですか? 芹菜という女の子については?」
「やれやれ、ヒトミに似て欲張りさんだわね」
クスッと口元を緩めたライムおばあちゃんは、暖めたティーカップに新しいお茶を注ぐ。香り高いそれをあたしの前に置くと、隣に腰かけて一口お茶を飲んだ。
「うん、なかなかいい具合だわね……和、そう慌てないで」