異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「秋人については、少なくとも私と会った“時”は、大丈夫だったわ。
ヒトミは私の幼なじみのお孫さんだったけれど、結婚してない私には本当の孫のように思えてずいぶん可愛がったものよ。ヒトミもなついてくれてたし。
セリナという単語は初めて訊くけど、もしかすると誰かを指す言葉? ならば申し訳ないけれどお力になれないわね」

「そ……う、ですか……。ありがとうございました」


とりあえず、秋人おじさんが無事だったと知れただけでも喜ぶべきだ、と無理に自分を納得させた。


今まではどれだけ捜しても手掛かりすら見つからなかったんだ。ライムおばあちゃんから聞けなくても、他のおばあちゃん達から聞けばなにかわかるかもしれない。


「今日は遅くなりそうだから、良ければ泊まっていってくださいね。大したおもてなしもできませんが」

「あ、いえ……そんなご負担をかけるわけには」

「一晩、そばにいてくださると助かるわ。あなたはヒトミに似ていて、昔に戻ったようで懐かしいの」

「……」


これほどお年をめした方にこれ以上お世話になるのは心苦しかったけど。そこまで言われたら、拒むのもひどい気がして。バルドをちらっと見たら、勝手にしろとでも言わんばかりの関心が無さそうな無表情。


何かムカッときたあたしは、バルドの痩せた頬を見てそうだと思いだす。


(そうそう、帰ったらバルドはまた書類の山に囲まれて仕事をしなきゃいけないんだ)



< 229 / 877 >

この作品をシェア

pagetop