異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



かなり日が傾いてきたせいか、山の稜線に太陽が隠れて全てが茜色に染まる。山の長い影が村の大半を覆ってるせいか、少しひんやりした空気を感じた。

あちこちで夕食を作っているらしい湯気や煙がたなびいてる。石が敷き詰められた道をまっすぐ歩いていくと、中心に広場があって。その脇に井戸が掘られてた。


川の水を使ってもよかったけど、あたしはある目的があって井戸を訪ねた。案の定、井戸端会議を営む女性達がそのそばにたくさんいた。


『こ、こんにちは』

『あんた、誰だい? この辺じゃ見ない男の子だねえ』


胡散臭いものを見るような目で、じろじろと見られる。そりゃそっか。辺境ほど保守的でよそ者には警戒心が強いのは、こちらの世界でも変わらない。


『ぼ、ボク……ナゴムです。ライムばあちゃんの世話になってます』

『えっ!?』


一人の中年女性が、目を見開いて驚きの表情を作る。なにかまずいこと言ったかな? とみなさんの顔を交互に見てると、一人の女性があたしの肩に手を置いた。


『あんた、そのなりだとおおかた旅人だろ? 悪いことは言わない、うちに泊まりな』

『えっ、なんでですか?』


どうやらライムおばあちゃんの名前に反応したらしい、と解ったけど。どうしてそんな事を言うのかわからない。首を傾げてると、旅人なら知らないのも仕方ないかと誰かが呟いた。


< 231 / 877 >

この作品をシェア

pagetop