異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。


100年……以上前?


『う……嘘』

『嘘なんかつかないさ。あたしは今年60になるけど、十の時に亡くなったばあちゃんが若い頃にライムばあちゃんと親友だったけど。神だのなんだのおかしなことを言い出したから、何だか気味が悪くて遊ばなくなったって。ばあちゃんが娘の頃だったから……まあ120年ほど前さね』

『……そ、それじゃあヒトミってご存知ですか? 巫女とかしていたひとは』


あたしがその名前を出しても、誰もがお互いの顔を見合わせて首を振る。


『人探しかい? あいにく、ヒトミって人は知らないねえ。聞きなれない名前だけど、あんたの国の人かい?』

『それよりさ、あんたも巫女だの神だの口にしない方がいい。このところ、また帝国が狩りを始めてるって噂があるからさ』
『狩り?』

『魔術師だのなんだのを、集めてるらしいじゃないか。17年前と一緒だよ。また隣国との戦になるかもしれないね。まったく、物騒な世の中さ……』


女性達はそれだけ教えてくれると、その気があったらうちに来なと背中を叩いて去っていったけど。


どういうこと?


誰ひとりとして、お母さんのことを知らない?


みんなが嘘をついてる? 隠してる? ううん、そんな空気じゃなかった。あの顔は本当に知らないと言ってた。


なら、ライムさんが嘘をついた? でも、それにしては整然としすぎて不自然さがない。


それに……秋人おじさんが現れたのが120年前? 8年前に失踪したのに?


いったいどういうことなの……!?


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