異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「なごむ、大丈夫?」
「う……うん」
黙って後ろに立ってたロゼッタさんが、あたしを労るように肩に手を置いてポンポンと叩いてくれる。
「わたしも話聞いてたけど、あれだけしっかり話せる人がおかしいってことはないよ。ライムさんの言うことは筋が通ってるし、なごむの話と辻褄だって合ってる。デタラメとは思えない」
「そっか……うん、そうだよね」
混乱してただ立ちすくむだけだったあたしだけど、ロゼッタさんの励ましが本当にありがたい。ひとりだったらきっと、またよくない方へ考えが転がってた。
親しくしているとはいえ、第三者からの言葉は説得力がある。ロゼッタさんがいてくれてよかった。
「心配かけてごめんなさい。さ、さっさと水を汲んじゃおう……って!」
ガラガラと井戸の水を組むために滑車を動かした時……桶と一緒に上がってきたのが、ヒスイだった。
「……なんであんた、そこから出るの?」
何があったのか腕組みをして難しい顔をしたヒスイは、桶の上に座ったままむむっと唸ってる。
《和より先に川伝いにこの地に来て以来、ずっとここに潜んでおったのじゃ。だが、おかしいのう……この地に“信仰”というものが消えておる》