異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……和、ありがとう」
秋人おじさんはギュッとあたしを抱きしめてくれた。そして……大きな体が微かに震えているのを感じる。
「……和は、僕にとってもたいせつだったんだ」
息苦しくなるほどに、力強く抱き寄せられる。
「初めてヒトミさんに会った時、君はまだ彼女のお腹にいて……異世界からの訪問者なんて信じられなかったけど……君が生まれて初めて信じる気になれた」
「あたしが……生まれた時?」
「そう。異世界からの女性が出産できる場所なんて限られてたからね。僕の母方の祖母が山間部の村で数少ない産婆をしてたから……祖母を頼ったんだけど。君が生まれた時、酷い吹雪がピタリと止んで太陽が顔を覗かせたんだ。それだけじゃない。遅れていた春が一気にやって来た……信じられないだろうが、君はヒトミ以上の力を宿して生まれたんだ」
「え……」
「だから、ディアン帝国が君を狙うということはわかりきってた……君がこちらへ来たのなら、きっとヒトミは亡くなったということだろう」
「おじさん……知ってたの?」
どこまで見通していたんだろう、とあたしが不思議に思うと、秋人おじさんは黙ったままあたしの体を離す。
「ヒトミは、きっと最期まで君の幸せを願ってたはずだ。僕も同じ……はずだったのだけど」
どこか自嘲するような笑いを浮かべた秋人おじさんは、そのままあたしの肩を掴む。
「きっと、僕は義理の叔父失格だ」
「え……」
秋人おじさんの瞳に、違う感情が見える。揺れる瞳に仄かに浮かぶのは……熱?
「和、僕は……」
肩を掴まれたまま、苦しげな表情で何かを言いよどむおじさんの言葉を待っていた。
だけど……。