異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
こしょこしょ、とロゼッタさんに耳打ちしてみた。すると、彼女の口がだんだんと弧を描いて……楽しそうな笑顔になる。
「いいね、それ」
「でしょ。じゃあ、やりますか」
お互いににいっ……と笑ってたけど、きっと悪い顔をしてたに違いない。だけど、猪突猛進な男どもを御するのも、女としての大切な役割ですからね。
とりあえず戦いを放っておいたあたしとロゼッタさんは、ライムおばあちゃんの家のシーツとカーテンをちょっと拝借。後で洗って返しますからね。
それから、手頃な石を拾って布の端で包んでからしっかり結んで……と。
「よし、できた」
「こっちもできたよ」
ロゼッタさんに手伝ってもらい、ライムおばあちゃんの家の屋根に昇る。戦いは裏手の林に近い場所に移ってた。
ジャスト・タイミング。鍔迫り合いを繰り返しながら、徐々にこちらへやって来る。そして、バルドがハルトに迫り剣を振り抜こうとした瞬間。
あたしは、それを思いっきり落とした。
ほぼ同時に、ロゼッタさんもハルトへ向けてぶん投げる。それは見事にハルトの頭に命中して、ゴツンと鈍い音が響いた。
「い゛でっ!」
「あ、手が滑ったね」
いや……ロゼッタさん。あなたわざとハルトの頭を狙いましたよね? 笑いたくて目尻がピクピクしてますよ。
けど、ロゼッタさんが投げたシーツはちゃんとハルトの視界を塞ぎ動きを止める役割を果たしてた。