異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「やっぱ顔は隠した方がいいかな?」
「隠した方が怪しいですよ。ちゃんと相手の目を見て話すのはコミュニケーションの基本です」
レヤーの答えに、やっぱりそんなものかと納得。一応そのままの格好で集落に突撃することにした。
……とは言うものの。
人工的な建築物と思ったのは、泥を固めたり岩を加工した住居らしきもの。それも数は多くないし、人影が見当たらない。
時折風が吹いて乾いた砂ぼこりを舞わせるから、持ってたタオルで鼻と口を押さえて保護する。100メートルばかり歩いてみたけど、本当に人が住んでるのか疑問に思うくらい静かだ。
踏みぬき均(なら)された幅2メートルばかりの一本道らしきものが大通りで、左右まばらに家が点在してる。やや高台に一際大きくて、白いお家がある。あれだけは石でできていそう。たぶん実力者のお宅なんだろうけど。
井戸や小川なんかの水場を捜してみたものの、行けども行けども枯れ木や岩や石しかない。本当に乾ききった土地なんだって思う。
「や~見事に人がいないね」
「そうですか? 少なくとも百単位の人々が住んでますよここには。今はただ家の中で息を潜めてるだけです」
レヤーの言葉はたぶん間違いはない。やっぱり、とあたしは息を吐いた。
「つまり、あたしらが相当不審人物で。かなり警戒されてるってことじゃない」
「まあ、そうですねえ」
のんびり答えるレヤーは、よいしょとその辺りに腰を下ろした。