異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ギィン! と金属音が耳元に響く。見れば、ロゼッタさんがバルドの剣を手持ちの斧で受け止めてた。
彼女は相当踏ん張ったまま、ジロッとバルドを睨み付ける。
「おまえ、必死に止める婚約者を斬るのか? なごむはいろいろ考えて止めてる。それを無意味にするのが帝国の皇子というものなのか?」
あたしの介入があって威力が減っているとはいえ、バルドの剣を正面から受け止める実力も、そこまで叱責できる豪胆さもすごい。ロゼッタさんがなおも何かを言う前に、バルドはようやく剣を引いた。
ふう、と息を吐いたあたしだけど。「いつまでしがみついてる」というバルドの台詞に、へ?と自分の状況を確認して。
頭が真っ白になりましたよ。
あたしは……バルドにすがるように思いっきり抱きついたままでしたから。
「ぎ……ぎゃあああああっ!」
どんっ! とバルドの胸を両手で押して離れた途端、ズキッと鈍い痛みが腕に走った。
「痛っ……」
「なごむ!」
ロゼッタさんが濡らしたタオルを手に駆け寄ってくる。
「出血、ひどい。早く手当てしないと……」
「だ、大丈夫……はは、ドジっちゃっただけだから」
たしかに、長袖が切れて半分は血に染まってるけど。バルドがハルトを斬らなくてよかったよ。だから、後悔はしない。