異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ロゼッタさんがあたしの袖を切ろうとしている最中、唐突に腕を掴んで自分の方へ引き寄せたのがバルドで。 彼は何を考えたのか、あたしの服を切って傷をさらすと、そこへ唇をつけた……って、ええっ!?
「ちょ……バルド、な、なに? あなたバンパイアだったの!?」
そんな馬鹿なと思いながらも、彼の触れた部分が熱を感じて混乱する。痛みが鈍くなって、熱に変わってく。
なんだか……体がだるい。熱でも出たみたいに、頭がくらくらする。
「バルド……もういいから、やめ……ッ」
彼の手から腕を引き抜こうとしたところで、反対に身体を寄せられただけじゃなかった。顎を掴まれ、重なったのが唇で。
どうして、なんて考えられない。自分の血の味がする濃いキスに、くらくらきて足から力が抜けた。
終わったのは、ロゼッタさんの介入で。怒り心頭な彼女は、バルドに斧を向けた。
「なごむを斬ったおまえ、なごむにふさわしくない」
「それが、どうした?」
バルドはロゼッタさんの放つ殺気を受け流し、まったく動じもせずに言い放つ。
「ふさわしいとか、ふさわしくないだとかは関係ない。全てはオレが決める」
唯我独尊もいいところな発言をしたバルドは、あたしを離さないままハルトに目を向けた。