異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……」
ハルトは苦みのある顔であたしを見た後、フッと目を逸らす。ガリガリと頭を掻いて……って、あんまりいい癖じゃないよね。
「……そりゃ、おまえのためだ……なんつっても信じねえだろ?」
「あなたとセリス王子には出会ってすぐ騙されたから、すぐにはむりだよ」
「……だよな」
ハルトも自覚はあったらしく、ばつの悪い顔をして頬を掻いてた。
「けど、な。セリスが話したと思うけど、あんたがディアン帝国に利用された挙げ句、命を落とす可能性があったからなんだよ」
その話は秋人おじさんのメッセージにもあったし、ライムおばあちゃんにも聞かされた。やっぱりディアン帝国があたしに期待する巫女としての役割は、古代の破壊兵器を動かすための生け贄?
「……聞いたよ。秋人おじさんからも、ライムおばあちゃんからも」
あたしはバルドにがっちり抱き寄せられたまま、彼の様子が気にかかってた。
もしかするとバルドがあたしを婚約者にしたのは、帝国皇子としての義務だったの?
バルドは古代兵器のことは一度も話してはいない。けど、あたしを使って兵器を動かそうとするなら、婚約という手段で自分のもとに縛りつけるのは有効な方法だ。
侍従長のヒルトさんが話してた通りに、表向きはあたしを外国から守るためみたいだけど。
バルドは……本当は何の目的があって、あたしと婚約するなんて言い出したんだろう?