異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「バルド、あんたはまさか和を利用するために婚約したのか?」
まるであたしの気持ちを代弁するようなハルトの発言に、ギクッと全身が強張ったのを感じた。
ハルトの大胆な言動に驚いたのもあるけれど、何よりバルドがどんな答えを出すのか聞くのが怖くて。
もしも、もしもバルドがあたしをただの道具と見ていたのだとしたら……どうすればいいんだろう?
バルドがあたしを兵器の駒にするなら、あたしは彼のそばには居られない。
お母さんが異世界に逃げ込むほど怖れた最悪の事態を、あたしが実現させるわけにはいかないんだ。
怖くて、体が震えてきた。答えを聞きたくなくて、離れようともがくのにバルドは決して離してくれない。
どうして……? バルドは好きな人がいるのに。なんで、人前でキスなんて……意味がわからないよ。
耐えられなくて視線を落として、あっと驚いたことがあった。
傷が……止血されていただけじゃない。血の痕は残っていたけど、うっすらとした傷痕しか残っていなかったから。
まるで、何ヶ月かかけて治った痕みたいに。
長袖の半分を染める出血をした怪我だったのに……どうして!?
呆然と腕を見つめていると、視線を感じて顔を上げてみれば。バルドの黄金色の瞳と視線がぶつかって、心臓が跳ねた。