異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《まあ、そう悲観するでない》
「また、唐突に出たの……あなたは」
マジで神出鬼没なヒスイは、今はもとの古代朝廷の正装の格好でふわふわ浮かんでる。
今はすっかり夜だから、彼女が緑色に淡く輝いてるのがよくわかる。
《和、ハルトがそなたに会いに来たは、無意味ではないぞ》
「秋人おじさんのメッセンジャー以外に何かあるの?」
《ある。これを見るがよい》
ヒスイはハルトの元に降り立つと、彼の頭に手を翳す。ハルトの体がぼんやりと光ると、不思議なことに彼の体から無数の細い光が伸びて、四方八方あちこちに散らばり蜘蛛の巣のように伸びていった。
「これは……?」
《こやつが持つ縁(えにし)、じゃ。分かりやすいよう目に見えるようにしてやったぞ》
「縁……赤い糸みたいなもの?」
ヒスイはそのうちの一つ……紫色の光の糸を手にすると、それをあたしに差し出してきた。
《論より証拠じゃ。それに触れてみよ》
「は? ちょっと……正気? あたしが触って切れたらどうするの」
《真の縁はそう容易く切れたりはせぬ。いいから触れてみよ》
ヒスイが強引に押し付けてくるけど、ハルト本人はいいの? とちらっと見れば、彼は何かを悟ったように頷く。
仕方ないか……と渋々紫色の糸に触れた瞬間、あたしの中に爆発するように大量の情報が入り込んできた。