異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
まるで、激しい暴風雨に晒されたようだった。
頭に流れ込むたくさんの情景や思考に感情。これはいったい何!?
苦しい、と胸を掴む。息が詰まりそうだった……だけど。
その手を、大きな手のひらが包む。節くれだった、皮の厚い豆だらけの硬い大きな手……。
知ってる。これは……この手は。
「しっかり、自分を保て」
少しだけかすれた、囁くような低い声。聞き慣れたそれに、しがみつくように手を重ねる。
ひとり、じゃない。あたしはひとりぼっちじゃないんだ。
それを感じてやっと心が落ち着いてくると、情報の流れがゆっくりになっていることに気付いた。
そして、その中に見覚えのある景色があちこちに散らばり始める。
あれは……近所にあった児童公園。塗装が剥がれかけたキリンの滑り台があって、クマのブランコがお気に入りだった。100歳のおばあちゃんがやってた駄菓子屋……中学が上がる頃に無くなってたっけ。
あれは……あたしの、ううん。あたし達のクラス。小学生のあたしが……髪を結んでもらってる。
これは……この記憶は。
あたしが知らないことも多い。なら……これの持ち主は。
《そうじゃ、この記憶はそなたの友達であるセリナのものじゃ、なごむ》
「!」
目の前に現れたヒスイに、あたしは詰め寄った。
「どういうこと? どうしてハルトと芹菜に縁があるの!?」