異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



『秋月 和様。
突然のお手紙にさぞや驚かれるでしょう。先ずはお詫び申し上げます。
さて、私 セリナは今セイレム王国という国にいます。様々な理由があり、もうずいぶん長い時間を過ごしてきました。
あなたがようやくディアン帝国に現れたとの報に、懐かしく年甲斐もなく胸が踊ったものです。
こちらの世界に馴染むまでは、とお知らせすることを控えていましたが。もう数ヶ月経った今ならば、お会い出来るかと使者を立てさせていただきました。
無論、逢わないという選択肢もあります。あなたが二度と私に会いたくないならば、この招待状を使者にお返し下されば、二度と関わらないとお約束致します。
願わくば……あなたとお会いできる時間が訪れますように。そう祈っています。
芹菜』


年の割に綺麗な筆跡に、芹菜が自分のマスコットキャラにしていたウサギのイラスト。 絵が下手なのに、いつもいつもサインがわりに使ってた。


「これ……間違いない。芹菜の字だ……でも、どうして?なんかおかしい。芹菜がこんな丁寧な文章を書くなんて……それに、ようやくあたしが現れたって。どういうこと?芹菜は後から来たんじゃないの?」


封筒を握りしめたまま、ハルトとヒスイを交互に見て問い詰めようとしたけど。2人とも黙ったまま何も答えない。苛立ったあたしが足を踏み出した瞬間、バルドがあたしの腰を抱えて自分のもとへ引き寄せた。


< 260 / 877 >

この作品をシェア

pagetop