異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第15関門~異世界のお妃様という身分のヤマトナデシコさんたち。






「うわぁ、素敵」


セイレム王国の首都レンディに着いた時、あたしの口から思わず感嘆の声が漏れたのは、ごく自然なことだと思います。


国の要(かなめ)になる水晶宮殿と呼ばれる、特産の鉱物を使った半透明のお城は国鳥の白鳥を模していて、建物が左右に広がる優美なデザイン。

お城を囲むのは緑豊かな庭園で、正面の大門からまっすぐに伸びる大通りを中心に整備された道が四方八方に広がっていて。日本みたいにカチカチのイメージじゃない。円状に造られた街は、どこか優しい雰囲気を感じさせた。


そして、水路が多い。それに伴って緑地やたくさんの植物が植わってて、色とりどりの花も咲いてた。


まるで、楽園。ディアン帝国の乾燥と暑さに慣れた身からすれば、懐かしい穏やかな暖かさに目を細める。


「すごい……セイレム王国って、こんなに綺麗な街が首都になっているんだ」

「ああ。この地に遷都(せんと)されたのは先代王だが、短期間でここまで整えられたのが現国王陛下だ。それまでさしたる産業もなく貧しかった我が国を叱咤激励し、ここまでの繁栄を築かれた」


ハルトの説明を聞きながら、丘の上でレヤーとともに感心した。


「たしか、現国王陛下はハロルド二世陛下……だっけ。セリスのお父上だったよね」


お妃教育で無理やり覚えさせられたけど、まさか本当に役に立つ時が来るとは思わなかった。


「ああ。おまえたちについては先触れの使者を立ててあるから、受け入れの準備をされてるはずだ」


ハルトの導きで、丘の上からゆっくりと首都に入っていった。

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