異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「きれい……」
庭園には噴水があるし、小川と池まで作られてる。ビオトープみたいなものかな。生態系そのままに再現した自然は、見てるだけで楽しい。
「あ、カエルがいる」
「カエル? なにそれ」
ロゼッタさんが不思議そうに訊いてくる。そりゃそっか。カエルは乾燥した土地にはいないもんね。
あたしが説明しながら小川沿いに歩いていると、低木の茂みががさがさと揺れる。
なにか生き物がいるのかな? とのんびり見てたけど、とっさにロゼッタさんがあたしの前に立って短剣を構えた。
『誰かいるのか!?』
警戒心を剥き出しにしたロゼッタさんは、さながら黒豹みたいだ。緊張感が高まっていく中で、さらに茂みが動いてニュッとあるものが顔を出した。
それは、銀色の毛を持つネコちゃん。赤いリボンが結ばれていて、ベルがちりりんと涼やかな音色を立てる。
「わっ、か……かわゆす!」
生き物を飼った経験はちっちゃい頃しかないけど、今でも大好きなんだよね。
「おいで、怖くないよ」
膝を落として猫に呼びかけている最中、また茂みががさがさと動く。ロゼッタさんがあたしを庇うように動いたけど、現れたのは人間。しかも、薄いピンク色のドレスを着て髪を結い上げてる。
どう見ても、あたしと同じくらいの年齢の女の子に見えた。
「こら、シルバー。よそ様のお庭にはいっちゃだめでしょ!」
しかもなかなか活発な性格のようで、ドレスが汚れるのも構わずに猫を抱き上げてた。