異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「お騒がせしてごめんなさい。このシルバーを探してただけなのに、大捜索されそうな勢いでちょっと大げさ。それだけ心配して貰えるのもありがたいんだけど。ちょっとだけ息苦しくなる時もあるかな」
肩を竦めたユズさんは、ずいぶんあけすけに話をするけれど。初対面の人間にそこまで言っていいのかな? 仮にも王太子妃という身分なら、もっと慎重にならないといけないんじゃないかって思うけど。
猫を抱えあげたユズさんは猫の前足を掴むと、ピョコピョコと振らせる。
そこで、やっと思い出した。
国境の町の温泉で出会った一人の女の子……キキの話してた、彼女が仕える王太子妃のことを。
名前はユズで、日本から来たもと女子高生。で、今はちょっとしたホームシックになってるから、話をしてみてほしいだとかなんだとか頼まれたっけ。
あの時はそんな余裕なくて断っちゃったけど、今は大丈夫な気がする。それに、キキには看病して貰ったお礼を返してない。八つ当たりしておいて謝ってないし、何だか気まずいまま別れた。
それなら、今恩返しのためにユズさんの話をきくくらいならあたしにもできる。大それたことはできなくても、彼女が喜ぶように頑張ろう。
それに、何より。
先に彼女がこちらの世界に来てたなら、先輩として経験談やどうしてこの世界に残る決意をしたかとか。いろいろと聞きたいこともあった。