異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「私の力では自分だけで精一杯なんですぅ~……ひと一人なんてとてもとても運べませぇん」


シクシクと泣きながらレヤーはアールグレイを淹れてくれる。その間に近衛兵に頼んでおいた別のお客さまが庭園へやって来た。


「ユズ様!」


まさに血相を変えた、という表現がぴったりのライベルトさんが、ユズさんの元に飛んできた。膝をついてご無事でしたか、と安堵しながらも。お説教も忘れていない。


「他の護衛を撒かないでください、とあれほどご注意してもわかりませんか? この庭園で御身に何かあれば、下手をすればディアン帝国やセイレム王国との国際問題に発展しかねないのですよ。その辺りをきちんとわきまえてください」

「ごめんなさい……」


ユズさんはしゅん、と塩をふった菜っぱみたいに萎れちゃってる。そして、ライベルトさんと駆けつけたキキに「心配かけてごめんね」と謝ってる。


ユズさんの行動はハッキリ言えば軽率だった。あたしでも判る。一国の王太子妃ならばしていいことじゃない。


だけど、でも。


彼女の元気がない様子が気になる。うまく言えないけど、ずっと自由だった小鳥が、ゲージに閉じ込められてしまったみたいな。


息苦しい、という思わず漏らした本音は。周りが思った以上に深刻なのかもしれない。

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