異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ね、レヤーさんだったかな? 今度日本に行った時にお手紙を……あたしの家族に渡して欲しいんだけどいい?無事なこととか知らせてほしいの」
「ええ、構いませんよ。生き物は無理ですが、ある程度の大きさなら物も運べますから」
レヤーが頷くと、ユズさんはほっとしたような顔をしてる。やっぱり、彼女は大切な家族を日本に残してたんだ。その事実に、同情心が湧いてくる。
たったこれだけのお茶会なのに、彼女はずいぶん明るくなって楽しんでる。ここにいる間だけでも、あたしが仲良くすればもっと喜んでくれるかな?
「あの、ユズさん」
「ユズさんだなんて、いいよ。プライベートはユズって呼び捨てでいいから。もちろん、公的な場所だとそれなりにお願いするけど」
「あ、じゃああたしのことも和、って呼び捨てしてね。……あのさ、ユズはこちらに来てどれくらい経つの?」
「えっと……去年の11月に召喚されたから、まあだいたい10ヶ月ってところかな」
「へえ、まだ1年経ってないんだ……けど、大変でしょう? 異国どころか異世界にたった一人だし。王太子妃だなんて立場は」
「そりゃまあ……ね」
ユズは言葉を濁しながら、アールグレイを口にする。まだ、初対面でそこまで心は開いてくれないか。それは仕方ない、まだ同郷というだけで打ち明けられるほど信頼を築けてないんだから。