異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「和さん、和さん。夜のことですよ」
機転を利かせてくれたらしいキキさんが、お茶を置くふりをして耳打ちしてくれましたが。
夜? 夜にすることって、何だ? 体操でもするのかと首を傾げたところで。
決定的なひと言を、隣に座ってたロゼッタさんが放ちました。
「なんだ、男女の性交渉のことか。3回は多くない。わたしの集落の男なら普通。子どもが欲しいなら、もっと頑張るよ」
ガチン、と全身が石化しました。
せ、性交渉……性交渉って!
「え、そうなんですか? なら、ティオンは普通ってことかな」
「だけど、夜明けはやり過ぎ。あんたよっぽど愛されてるね」
あからさますぎるロゼッタさんの言葉に、ユズは耳まで真っ赤になってティーカップを両手で掴んだ。
「え……えええっ、エッチのことだったの!?」
「何だと思ったの? ナゴム、鈍感ね」
最近、ロゼッタさんが言うようになりましたなあ……しくしく。
って言うか。あたし、めちゃくちゃ投げやりな答えを返したけど。絶対誤解されたままだよね? バルドと夜に激しいとか何とか……モゴモゴ。
「あ、あのう……じ、実は」
「あら、楽しそうね。わたくしも混ぜていただいてよろしいかしら?」
声が聞こえてハッと振り向けば、そこに立っていたのは一人の壮年女性。40過ぎたあたりだろうか。薄茶色の髪の毛をゆったりと結い上げ、紺色のドレスを身にまとっていたけど。
その笑顔は……まさか。
「芹菜……?」
あたしが呆然と呟くと、その女性は穏やかに微笑んだ。
「久しぶりね、和。セイレム王国へようこそ。わたくしが現王妃のセリナ・ド・セイレムです」