異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第16関門~不可逆な時間が流れて。
「……嘘」
そう、言うしかなかった。
セイレム王国の迎賓館の庭園で、目の前にいる「芹菜」を名乗る女性は、どう若く見ても40そこそこにしか見えない。肌の張りや細かなシワや、髪の毛の艶や体型……細かい部分で違う。
あたしが日本から召喚された時の芹菜は、同じ年の16歳だった。それが、3ヶ月も経たないうちに倍以上の年を取るはずない。そんな昔ばなしの浦島太郎のような、おとぎ話めいたことが起きるなんて。あるはずないよ。
けど、よくよく見れば芹菜と言われれば似てる部分もある。
悪戯っぽい笑い方とか、すぐに髪の毛を弄る癖とか、顔なんて芹菜のお母さんにそっくり。母娘似た者同士だからか、よく服を貸し借りしてるくらい仲がよかった。
「……嘘、でしょ? 春菜(はるな)おばさんなんでしょ。そんなふうにからかおうって、ホントにひどい。相変わらず芹菜に似てイタズラ好きなんですね」
「和」
その女性――王妃様は、フッと優しい瞳をこちらへ向けてきた。気がつくと、彼女の後ろには近衛兵や侍従等が控えている。王妃ならば当然国王陛下に次ぐ要人だから、警備も臣下もそれなりにいるもの。
それでもフライングで会いにきて下さった王妃陛下に、あたしは何を言っていいのかわからない。