異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《それはそうじゃろ。水瀬の初代も、ミッツ村の男と契約し夫とした。体を交えるならば、やはり情を持つ相手がよいのは人も変わらないじゃろう? じゃから、ヒトミも恋人がおったよ……それが、和。そなたの父上じゃ。ミッツ村の職人だった男じゃな》
「ミッツ村? 嘘……だって、あっちにお父さんっぽい人はいなかったじゃん」
それどころか、お母さんの記憶を持つ人がいなかった。闇の霧のせいで消されたとか聞いたけど……あれ? なら、それならお父さんは。
嫌な予感を肯定するように、ヒスイは残酷な事実を突きつけてきた。
《そなたの想像通りに、そなたの父は殺された……ヒトミとそなたを護るためにな。じゃから、よけいにヒトミは必要に駆られ日本へと逃げたのじゃ》
「……!!」
お父さんが……あたしの本当のお父さんは。生まれる前に殺されていた?
目の前が一瞬真っ暗になって、ロゼッタさんが支えてくれたけど。何だか頭がずきずきと痛むし吐き気もした。
「お父さん……殺されたの?」
《それだけ、水瀬の巫女の力を欲しておったからじゃ。古代兵器を動かすだけでない。巫女は死者を甦らせることすら可能だからな。その力はわらわにも計り知れぬものがある》
「……じゃあ、なんでお母さんはお父さんを」
《そなたの父・ヨアキムは望まなかったからじゃ。死者を甦らせるは秘技中の秘技。命の危険すらある。彼が無理に背中を押して、ヒトミを日本へわたらせたのじゃ》