異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
レヤーはしぶしぶ結界を解いてくれた。これで、あたしは無防備な状態。誰かが矢を射ってきたらアウト。
けど、あたしはそこまで鈍いつもりはないし、もしやられたら全力で返してやるけど。害意がないなら話は別。コミュニケーションの基本は、直に会って目を見ての言葉の交わしあい。
歩み寄るあたしを見た人たちのざわめきが大きくなる。予想外だったのかもしれないけど、別に悪い反応じゃない。
壮年男性は、たぶん40代くらい。父と変わらないような年齢だ。ひげをたくわえた彼は、日に焼けてがっしりした体格で、腕なんかすごい太さ。力じゃ叶わない……だろうけど。
手前1mほどで足を止めた彼に、あたしはにっこりと笑って挨拶をした。
「こんにちは! あたしは、秋月 和って言います」
「ナゴム……?」
びくっ、とおじさまの眉が動いた。あれ? あたしの名前に反応した??
「ナゴム……ナゴヤ、キシメン! ミソカツ!!」
「……は?」
――あたしは何秒かフリーズした。