異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「時間を遡って……過去に飛ばされた? そんな……そんなことって」
セリナの話は到底素直に受け入れられない。時間は過去、現在、未来になっていて。それは誰にも動かせないはず。
どんなに望んだってその流れを変えたり、過去や未来へいくなんて無理。マンガとか映画とかの創作じゃあるまいし、あたしの中では信じられないというより“あり得ない”。
もしもセリナの話が事実だとしたら、あたしたちを狙うやつらはとんでもない力を持っていることになる。時空をねじ曲げて過去へ干渉できるなら、歴史そのものでなく。何もかもが根本から変わってしまう。
“今あって当たり前”な人やものだけでなく、国自体がまったく別のものへとなってしまうかもしれないんだ。
歴史の改変、なんて生易しいレベルの話じゃない。世界すべてが姿を変えてしまう可能性だってある。
「セリナ……本当、なの? “今”から25年前の過去に飛ばされたって。いったい誰が……なぜ、あなたに」
「信じられないのも無理はないでしょう。わたくしだって飛ばされた当初は夢だと思うくらい信じられなかった。
けれど、地球の日本にいる16歳のわたくしは確かに“これから”25年前のこのセイレム王国へ飛ばされるの」
「……な、なら。それを阻止しないと!」
信じる信じないはともかく、あたしはそれだけでもと立ち上がった。
「セリナ、自分の意思で残ったとしてもやっぱり嫌だったんでしょ? なら、今の……日本にいる16歳の芹菜を護らないと」