異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「それは、だめ」
セリナはゆっくりと首を横に振った。
「な、なんで? だって、あなたは不本意に知らない世界の過去に放り投げられるんだよ?
まだ16でこれから楽しいこともいっぱいあるし、なりたい職業だって……将来は看護師さんになるため看護大目指してたじゃん! あと、年末には家族でヨーロッパ旅行行くってバイトも張り切ってたでしょ。
好きなアーティストのライブだってチケット取れて……楽しみって。
カレシだって! 雄大くんと将来結婚の約束してたじゃん。あれだけラブラブだったのに。 夏休みには、スイーツバイキング行くんだって言ってたよね?好きなブランドの服が買えたからライブに着るって楽しみにしてたよね?
そんな楽しみも未来も、ぜんぶぜんぶなくなっちゃうんだよ。
あたしは……“芹菜”が苦しい想いや辛い想いはして欲しくない! 何の取り柄もないあたしを唯一友達って言ってくれた。大切にしてくれた。大好きな友達だから、不幸になって欲しくないんだよ!」
セリナを説得しようと、一生懸命に言葉を重ねた。彼女の肩を掴んで必死に体を揺する。どうか、考えを変えて欲しくて。
「あたしはもういいけど、芹菜は幸せになってよ!」