異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「……セリナ」


芹菜が事故に遭っていたなんて。彼女がそんな大変なめに遭ってた。そのことが悔しくて悲しかった。


「まさか……あたしを捜してたせいなの?」

「違うわ。和、あなたのせいじゃない。わたくしのドジのせいでそんな場所を歩いていただけたから。
それで……ハロルドが言うには、わたくしに施した治癒術はこちらの世界にいる間だけ有効で。微妙に理(ことわり)が異なる元の世界に還れば、術が無効になって命が失われるかもしれないって。
彼は教えてくれなかったけれど、よほどひどい状態だったのはたしかね。
けど……口下手だけど、不器用な優しさをくれる彼に次第に惹かれていったの。
雄大のことはもちろん忘れなかったわ。今でも彼は大好きよ。
けど、わたくしはハロルドと逢えてよかった。激しい愛ではないけど、穏やかな優しさで包んでくれる彼だから、わたくしも愛せたの。
だから、セリスが生まれたのよ」

「やっぱり……セリスはセリナの息子だったんだね」


彼の笑った時の小悪魔めいた表情。どこかで見たことがあると思ったら、10年近くともに過ごしてきた親友と同じだった。だから、セリナはセリスの母親なんだってすんなりと納得できた。


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