異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「それに、ハロルドに聞いたら不可逆性のある時間に干渉するなんてほぼ不可能だから、きっとわたくしの一回きりだったんじゃないか……って。だから、連中が更に過去へ干渉するのはほぼ無理じゃないかと言ってたわ」
「そっか……」
そりゃそうだよね。人間一人を過去や未来へポンポン飛ばせたなら、何もかもがめちゃくちゃになってしまう。
けど、とあたしは引っかかりを覚えた。
「セリナ、それじゃああなたは納得してるの? これでよかったんだって。二度と日本に帰れなくても」
「ええ。これがわたくしの運命なんだと。このセイレム王国で与えられた命ですもの。多くの人を幸せにすることが使命だと、今では思っています」
穏やかに微笑むセリナの顔は慈母のように優しげで、何もかもを包み込んでくれる暖かさを感じる。
きっと、有能な王妃としてみんなに慕われているんだろう。癒しの力に長けたセイレム王国の王妃として、彼女は立派に自分の務めを果たしてる。
昔から看護師を目指してたセリナ。方法は違えど、誰かを助けたいという想いは変わらない。
きっと、彼女の夢は叶った。関わる形は違っても、彼女らしいやり方で。きっと、たくさんの人が救われたんだろう。