異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「セリナ、あたしは帰りたい。日本へ帰りたい。秋人おじさんも帰すことができるって言ってた。だから……」

「ええ、あなたが日本へ帰るならお別れね」

「セリナ!」


今度はあたしが彼女に抱きつく番だった。


「日本に帰ったって……芹菜がいないなんて。信じたくないし、嫌だよ。なんで……なんで芹菜が居ないのよぉ」

「和、ごめんなさい」


二度と、あの明るい笑顔の芹菜には会えないんだ。ここにもセリナはいるけれど、セイレム王国の王妃となった25年の年月を経た、本人とは言ってもまるで別の人。


あたしが会いたかったのは、またじゃれあいたかったのは。16歳の芹菜なのに。


もう、二度と会えない。


芹菜の召喚を阻止したら、彼女は即座に日本で命を落とす運命にある。それを止める術はあたしにはない。


だから、止めちゃいけない。16歳の芹菜を助けるには、見守るしかないんだ。歯がゆくてもそれしか方法はなかった。


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