異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
大泣きのあたしの頭を、セリナはゆっくりと撫でてくれた。
まるで、お母さんみたいに。
周りのみんなも余計な口出しはせず、ただ黙って見守ってくれてありがたかった。
「……時間に関する術は不可逆性のあるものだって言ってたけど、あたし……おかしなことをミッツ村で聞いた」
あたしはセリナに、秋人おじさんのことを話す。この中でヒスイを除いて、秋人おじさん本人に会ったことがある人はいない。だから、あたしはセリナにおじさんやお母さんの話をした。
「……秋人おじさんが、120年前に現れたかもしれない?」
「闇の術の影響を受けてないライムおばあちゃんによれば、ね。ディアン帝国は100年前に建国されたみたいだし、その建国時の神話に面白い記述を見つけたんだよ」
あたしはミミに借りた絵本を開いてセリナに見せる。そして、創設神はカレーが好きなこと。カレーを出すお店が帝都にあることを伝えた。
「たしかに……秋人おじさんは辛いもの好きだったものね。七味唐辛子でできたおせんべいをバハネロのタバスコを浸けながら食べてたのを見て、味覚がおかしいと思ったものよ」
しばらく考えたセリナは、一度ハロルドに訊いてみるわねと言ってくれた。
「さて、それじゃあこれからのお話をしましょうか。わたくし達が勝つべき相手は……世界に蝕む闇の者たち」
そうして、セリナが口火を切って話し合いが始まった。