異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ま、ご飯はいただけたからよしとしますか」
パチパチ、と焚き火が火の粉を撒き散らす。レヤーの言う通り、沙漠(さばく)の夜は結構肌寒かった。
ちなみに、沙漠ってのは砂だらけの丘陵をイメージしがちだけど、高原にあるような土や岩だらけの乾燥した土地も沙漠の一種。砂漠はあくまでも沙漠の一種に過ぎないんだわさ。
……って。これは大昔おじさんに教えて貰ったことだけど。
理工学部にいたおじさんはモノ作りが好きだったけど、自然も好きな人であたしもよくあちこち連れていってもらったなあ。
「にしても……まさかキシメンやミソカツって単語があるなんてすごい偶然ですね」
「ってか! 偶然じゃないでしょ。絶対名古屋か愛知県民がこの世界に来てるって証拠じゃない」
レヤーののんびりした言葉に鼻息荒く返した。おじさんはどちらも好物だった。なら、もしかしなくてもこの世界に……この国にいるのかも? と期待は膨らむばかり。
「う~ん……どうなんでしょうね? たしかに、名古屋名物が単語なのは単なる偶然と言うにはあまりに符合が合いすぎますが……和さんのおじさまがこの国に来ているという可能性はあまり高くないと思います」
重湯みたいな穀物をドロドロになるまで煮たスープを飲みながら、レヤーは冷静で容赦ない言葉を吐く。
「私も異世界へ何度も行き来してますが、偶発的なトリップではまず同じ世界に行ける可能性は極めて低いと言わざるを得ません。それこそ世界は無数に枝分かれして存在するのですから」