異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「いいよ、君が無事でいてくれれば。僕にはそれが何よりも嬉しいことだから」
「ティオン……」
ユズの髪の毛を指ですくティオンバルド殿下は、すっごく熱い眼差しをユズに向けてる。情熱的というか……ハロルド国王陛下とは違う、若者特有の……アチチチ! 近くにいると火傷しそう。
「けど、今晩はお仕置きだから、覚悟してね」
にっこりと笑うティオンバルト王太子殿下。甘い睦言を囁くような色気たっぷりなのに――目が笑ってないですよ。だから、ユズが心なしか顔が真っ赤になったり青くなったりと忙しい。
今晩のお仕置きって、なんだろう? 夕食でも抜くのかな。それだとつらいよね、うん。
あたしが腕を組んでうんうんと一人で納得していると、またロゼッタさんが面白そうな顔をしてる。
「おもしろいね、あれ。すっごくわかりやすい独占欲」
「え、そうなの?」
「そう。あのティオンバルトってやつ、ハロルドにさえユズと話させたくないって顔してる」
「は~……そうなんだ」
ロゼッタさんに感心したあたしは、ちっともそんなこと解んなかった。彼女は案外男女の機敏とやらに長けてるのかもしれない。