異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
長年連れ添ったハロルド国王陛下とセリナが春の穏やかさと暖かさなら、新婚ホヤホヤのティオンバルト王太子殿下とユズはさながら真夏。ラブラブを超えた、ハイパーラブラブ? 熱気にあてられて……熱中症になりそうデス。
こら、そこ! 公衆の面前で腰に手をやらない。手を妖しい動きさせない。こらあっ! 今、隙を見てキスしたでしょう。何をなさっているんですか。教育的指導っ!!
ホイッスルがあったら思いっきり吹きたい。なんなんだ、このぼっちに毒な空気は。熱帯夜と春一番が一度に来たんですか!?
退出しようにも、ここはディアン帝国に割り当てられた迎賓館のお屋敷。一応仮でも第一皇子の婚約者であるあたしがさっさと去る訳にはいかず、ギギギとぎこちない動きでお茶を飲む。
なんなんだ、この苦行は。このまま5分耐えれば新たな悟りを開けそうな気がしますけど。
“リア充爆発しろ”なんて言葉を今ほどしみじみ噛みしめた時はありませんよ。
「ふふふ……あの人たちは人形、あの人たちは人形、あの人たちは人形」
ぶつぶつと呪いのように呟き続けたあたしを見た周囲がドン引きしていたのは、たぶん気のせいです。はい。