異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



普段から理美容に関しては放ったらかしだったので、こんなのは苦行以外の何物でもないですって。


「あ……あの、こんなに徹底的にやらなくても……いいんじゃないかな~と。他にたくさんの出席者がいますし。皆さんそんなにあたしを見るとは思えませんけど」

『なりません。先ほど申し上げましたように、あなた様は皇帝陛下の長子たるバルド殿下のご婚約者。未だ皇太子が定まっていない現状では、 第一皇子であられるバルド殿下が皇子の代表――ひいては皇帝陛下の代理となります。であれば、その正妃が皇后陛下の代理となりますが、バルド殿下は妃はいらっしゃいません。
ですから、妃殿下の代わりとしてフィアンセであるナゴム様が皇后陛下の代理となられるのです。
ですから、手を抜くということはディアン帝国の威信に傷をつけるという愚の振る舞い。わたくしの名にかけて、あなた様を淑女として最高の状態へ仕上げさせていただきます』


何だかミス・フレイルがやたら長ったらしく熱く語るけど、要するにあたしを飾り立てるのを絶対に止めないってことだよね。ユズに会った時、腕輪に言霊の術を掛けてもらっていなかったら、きっとミス・フレイルの言ってる意味がわからなかったに違いない。


< 305 / 877 >

この作品をシェア

pagetop