異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《おお、リデル。待たせたな》
「いいえ、ちっとも。巫女様、エスコート役にお選びいただけて光栄に存じます」
お屋敷の居間に待っていた2人のうち、1人は10代後半とおぼしき青年。細身の体を青い詰襟の軍服に身を包み、薄茶色のくせっ毛が猫みたいに見える。顔も猫みたいに瞳が大きく、カワイイ系で表情がよく変わる。でも、その表情が誰かと重なる。顔だちも最近会った人に似てる。
リデルと呼ばれた彼はヒスイを崇拝するような目で見てて、あ、これは完全に落ちてるなって解る。彼がうやうやしく出した手を取ったヒスイは、思い出したように振り向いた。
《そうじゃ、紹介を忘れておったのう。こやつがわらわの今宵のエスコート役だ。皆、よろしく頼むぞ》
「セイレム王国第2王子の、リデル・ド・セイレムです。この度は巫女様のエスコート役を務めさせていただきます」
リデルはセイレム王国の第2王子! つまり、セリナとハロルド国王陛下の2番目の子どもか。
そうなると……とあたしがリデル王子の隣へ目を向けると、その人はソファからスッと立ち上がる。そして、あたしの前に来ると膝を着いてあたしの手を取った。
「和さん、今宵のパートナーをわたくしに務めさせて頂く栄誉をいただけますでしょうか?」
そう透き通る声で申し込んできたのは、白い詰襟の軍服に身を包んだセリス王子だった。