異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あの……でも、あたしは」
「ヒスイ様には弟と専用の侍女が着いてます。あなたが着いていく必要はありませんよ」
言いたいことを先回りされて、次はどう言って断ろうと思案していると、セリス王子がふっと哀しみを帯びた瞳になった。
「……あなたがわたくしをお許しにならないのは、わかっています。ディアン帝国で出会ってすぐに騙したのですから」
「……そ、それは」
ない、とは言い切れない。不安な心持ちの中で嘘をつかれたショックは、普段の時よりも深かった。だから、簡単に許せないと思ったけど。
でも……。
「……そ、それについては……もう、いいです」
驚くほどすんなりと、自分の素直な気持ちをセリス王子に伝えた。
「あなたがあたしの親友であるセリナの息子で、セリナに会わせようとしてくれたこと。それから古代兵器の血の話も聞きました。だから、あなたがあたしを思いやってしたことなんだって……今では解ってますから」
こちらこそごめんなさい、とセリス王子に向かい軽く頭を下げた。
「きっとあの時に話されてもパニックになるだけだったでしょう。だから、あなたの話さないという言葉に今は感謝しています」