異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「それでは、わたくしをお許しいただけますか?」
「……はい。あたしこそ何も知らないくせに、失礼な態度を取って本当に申し訳ありませんでした」
もう一度、彼に向かって謝罪を重ねる。すると、彼はあたしの手を取ったままスッと立ち上がった。
「ならば、今宵はわたくしにエスコートさせてください」
「えっ……でも、それとこれとは別じゃ」
「これだけ綺麗なあなたを、他の男に渡したくありません」
「……え」
綺麗な、あなた? 誰のことだろう?
思わずきょろきょろと周りを見渡したあたしに、セリス王子がクスッと笑う。
「あなたのことですよ、和さん。今宵のあなたは本当におきれいです。その美しさの前では、月の光も霞んでしまうでしょう」
「……!」
ガチン、と固まったとしても仕方ないでしょう。
生まれてこの方、異性から“かわいい”と言われた経験すらないあたしですよ。きれいだとか美しいとか言われても、他の誰に言ってるんですか? って無関係なレベル。
そんなあたしに向かって、セリス王子は容赦なく美しいと言いましたが。
……視力がおかしい? もしくはもう酔っ払ってますか?