異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「気に入っていただけましたか?」
「あ、はい。とても。本当にきれい……」
馬車で対面式に座っているセリス王子にクスリと笑われ、恥ずかしくなったけど素直に頷いた。
だって、きれいなものをきれいって言ってもおかしくないよね? はしゃいだのは子どもっぽいかもしれないけど。
たぶん、こうして水晶宮殿を訪れるのは最初で最後になる。ディアン帝国に戻って秋人おじさんに日本へ帰してもらったら……二度とこの世界に来られない。
だから、あたしはよく目に焼きつけようと窓から必死に目を凝らした。ミス·フレイルがいたらはしたないと眉をひそめただろうけど、彼女は後ろの馬車だからいいんだ。
「和さん」
「……はい?」
あまりに必死に見ていたからか、セリス王子の呼びかけにすぐには答えられなくて。数秒遅れて慌てて返事をした。
「そんなに慌てなくても、宮殿は逃げたりしませんよ」
また、笑われてしまいました。さすがにあたしも恥ずかしくなって、頬が熱くなってきた。窓から離れて膝の上に置いた両手に目を落とす。
「そんなに落ち込まないでください。別にあなたを責めたわけではありませんから」
セリス王子はそう言うと、しばらく押し黙る。
そして、再度口を開いた彼は意外なことを言い出した。