異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「和さん」

「はい」

「……あなたは、どうしても日本へ帰りたいのですか?」

「……えっ」


意外すぎる質問に思わず顔を上げると、セリス王子の真剣な瞳と視線がぶつかった。


えっと、どういう意味だろう?セリス王子があたしの行く末に関心を持つのが意外だったけど、彼はセリナの息子だと考えれば自然と納得できた。


きっと彼は、母親のためにそう訊いてるんだ。セリナはあたしと会って喜んでくれたから、少しでも長くいて会って欲しいんだろう。


それに、あたしは水瀬の巫女。その力を悪用されないか心配なのかもしれない。


だから、セリス王子は個人的な感情で訊いてはいない。ただ単に母親や巫女のことで、確認したいくらいだろうな。


「あ、はい。この滞在が終わったらディアン帝国に戻って……どうにかして秋人おじさんを見つけて、一緒に帰ります」


秋人おじさんの行方に関しては不安な要素もあるけれど、希望を捨てちゃいけないと思う。あたしがあきらめたらそこで終わり。彼を心配してた人はことごとく亡くなったから、せめてあたしだけは。そう思ってた。



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