異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「そうですか」
セリス王子はそれだけを聞くと、なぜかまた押し黙る。彼は反対側の窓へ目を向けてしまって、なんとなく気まずい空気にそれ以上はしゃぐ気分になれなかった。
セリス王子……怒ってる?
彼の醸し出す空気で、なんとなくそう感じた。
なんで? あたしはただ、訊かれたことに素直に答えただけだよね。 秋人おじさんのことも、セリス王子は知ってるはず。日本へ帰るということもたびたび口にしてきたし。何もおかしくない。
なのに、どうして彼が機嫌を損ねるのかがわからない。
せっかく綺麗なものを見て浮き立った気持ちも、空気が抜けた風船みたいにしゅるんとしぼんでしまった。
ダメだな、やっぱり。あたしは対人関係のスキルが低すぎて、こういう時どんな顔をすればいいか、どういうことを言えばいいかわからない。日本にいた時の、人間関係のまずさがもろに出てる。
(セリナ、セリナはこんな時どうしてた? あたしはわかんないよ……)
カタカタと馬車に揺られながら、気まずいままに専用の車止まりに着いてしまった。